

ムラサキは、中国、朝鮮半島、アムール地方および日本の九州、四国、本州、北海道の山地や丘陵地の草原に自生する多年草です。
茎の高さは40〜70cm、葉は無柄で長さ3〜7cmになります。花は6〜7月に開花し、白色で径が4〜9mm、のど部に黄色みを帯びた突起があります。(写真は紫根の花です)
利用部位は根茎部で、根を乾燥させたものが「紫根(シコン)」です。
中国におけるムラサキ
中国大陸では古くから紫根の効用が知られており、炎症、肌荒れの膏薬の原料として利用されてきました。代表的な医薬品に明代の医学書「外科正宗」に記述された「潤肌膏」がありますが、これは、紫根・当帰(トウキ)・ごま油・蜜蝋(ミツロウ)を配合した膏薬になります。
また染色染料としても重視されており、中国前漢代には、皇帝が使用する色として、他の者の利用を禁ずる「禁色(きんじき)」とされていました。
日本でのムラサキの歴史
中国の影響を受けて、ムラサキは染色の原料として利用されていました。古代日本において紫色は、高貴な色として憧憬される染料であり、聖徳太子時代の「冠位十二階の制」では、色が濃いほど高位の象徴とされていました。これは、紫色の染料が希少なためとも言われています。桃山時代以降、禁色の制も解除され、高価ではありましたが紫根染めの製品も一般的に普及し始めました。江戸時代に入り、武蔵野でのムラサキ栽培をはじめ、江戸近郊の各地で栽培が行われるようになり、いまでも関東地方西部ムラサキにいなんだ地名が残されています。
また、江戸時代に華岡青洲が「潤肌膏」に豚脂を加え、配合量を改良したものが「紫雲膏」です。現在でも火傷の薬として有名であり、漢方薬店で販売されています。
明治時代になると化学染料が普及するようになり、他の自然染料同様、ムラサキの栽培は急速に衰退していきました。
現在日本では限られたところでしか自生しておらず、また、園芸や薬用、染色用採取により急激に数が減ってきており、2000年(平成12年)には絶滅危惧IB類に指定されるなど稀少な存在となっています。

薬用としての紫根
紫根に含まれるナフトキン誘導体には、創傷、火傷の傷口の新生のほか、抗炎症、殺菌、抗腫瘍作用、解熱、解毒、消炎の効用が認められており、皮膚炎、湿疹、凍傷、火傷、切傷などの外用薬として現在でも用いられています。
紫根のエキスはその効果が日本薬局方に記されており、医療現場でも、火傷、痔、腫瘍、いぼ、アレルギー、皮膚癌などの治療に使用されています。
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